まず、歯がある場合に審美歯科テクニックをどのように駆使して、治療するのが一番良いのか、記していきましょう。
審美歯科治療を行う時の材料については、セラミック、ハイブリッドセラミック、コンポジットレジン、の3種類の材料があります。 それぞれの機械的特性については前項に記したとおりです。
万能に近い材料はありますが、短所の無い材料はありません。 審美材料の長所を可能な限り引き出し、短所を可及的にカバーすることがポイントではないでしょうか。
セラミックは、審美歯科領域においてほぼ万能な材料でしょう。 十分な強度があり、化学的にも非常に安定しているので、最初の審美的な状態を長く確実に維持できるというのが最大の長所です。
一方、脆いという性質も併せ持っていますので、十分な強度を持たせるためには、どうしてもある程度の厚みが必要です。
これが何を意味するか?と言うと、
金属も除去した、虫歯も除去した・・・、
でも強度を持たせるためにはもっと歯を削らなければいけない! という事態が起こるということなのです。 例え、それが健全な歯質であっても・・・です。
丸々全体を削って被せてあるようなさし歯の時には、どの道強度が必要ですから、避けられない犠牲と考えられます。
しかし、最小限の侵襲(ダメージ)で治してキレイな白い歯にする!という考え方に立つ時、いわゆる銀歯を白い歯にする時には、オーバートリートメントと言えるかも知れません。
また、セラミックで歯を再現する製作技術は、非常に難易度が高く、熟練を要します。 技術的にもとても高度なテクニックなので、高い費用がかかります。
⇒ 『 審美歯科 セラミック編 』 を参照してください。
コンポジットレジンは、審美歯科領域においてとてもお手軽な材料です。 必要最小限の範囲だけ削って除去して、そこに充填して・形を整え・磨いたら終わり。。。という、
まさに、最小限の侵襲(ダメージ)で治してキレイな白い歯にする!という考え方を具現化したものとでも言えるでしょう。
もちろん、治療回数は1回で終わり。
材料代も他の審美材料と比べて、とても安い物です。 テクニックとして決して簡単ではありませんが、セラミックほどの熟練は要りません。 (まあ、セラミックもコンポジットレジンも、術者としてセンスはいる気はしますが・・・) そうは言っても、銀歯をコンポジットレジンで充填したときの見た目については、セラミックで審美治療した場合と較べて劣るつもりはサラサラありません!
一方、長い目で見るとき、審美的には変色という変化が避けられません。 (審美歯科、という観点に立つ時、ちょっと辛いものがあります。 しかし、実際問題として目に余るほど変色したからコンポジットレジンを詰めなおしてくれ!などというケースは一度も経験したことがありません。)
また、材料自体の強度がやや劣る為、どの治療ケースでもコンポジットレジンを適応させる・・・、というわけには行きません。 適応症を選びます。
(逆に言うと、適応症さえきちんと選べば、かなり広い治療範囲を誇ります。)
⇒ 『 審美歯科 コンポジットレジン編 』 を参照してください。
上記の両者の中間、と考えれば良いでしょう。
臨床的には十分な強度があり、テクニック的にセラミックほどの熟練は要らず、材料代もかなり安く上がるので、最近はよく用いられています。
審美的には、コンポジットの特性が強いので、前歯に使うというより、奥歯向きの材料でしょう。
元の歯質との境目の色合いを合わせることは、非常に難しいのが現状です。
審美歯科治療において、術者側にも、患者側にも、いろいろな考え方があり、これが100%の正解! というものは無いだろうと思います。
しかし、セラミックであれば良いだろう的なただ白い歯のような物体という治療結果、高いお金を払ったのに、白いけど見た目が全然自然じゃない・・・という審美(?)治療結果を今までに幾つも見てきました。
審美歯科治療をする以上、前歯だろうが奥歯だろうが、見た目が自然な白い歯に仕上がらなければいけないことは当然のことです!
私は、
1.できるだけ歯に優しい(必要最小限の削りやダメージで済ませられる)こと
2.できるだけお財布に優しい(治療費が可及的に安い)こと
という立場から、審美歯科治療の流れを考えます。
その上で、
3.優先順位を付けてもらい、より気になる所から治すこと
4.より長持ちさせられるような環境を作り・維持すること
を考え、
できるだけ小さいダメージで、できるだけ少ない費用で、できるだけ最大限の効果が得られる! 作戦を考えています。
前歯を白くしたいという場合、第1選択はホワイトニング、第2選択はラミネートベニアクラウン、最後がセラミッククラウン、となります。
奥歯の銀歯を白くしたいという場合、第1選択はコンポジットレジン、第2選択はハイブリッドセラミックインレー、最後がセラミッククラウン、となります。
いわゆる銀歯であれば、通常、コンポジットレジン充填という治療法でかなりの範囲までキレイな白い歯に出来ます。 費用(金額)的にも安くつくし、歯を削る量は少ないし、安いくても見た目はバッチリ!だし、個人的にはこんな良い治療法は他には無いと思っています。 ただ、強度的な問題で、どんな歯であってもコンポジットレジンで治すというわけには行きません。
コンポジットレジンで治せない大きな銀歯には、ハイブリッドセラミックインレーで対処することになります。
そして、丸々被せているような奥歯のさし歯には、強度的に十分なセラミッククラウンで対処します。
いわゆる銀歯をセラミックで白い歯に治した場合、長期的な経過としてセラミック自体の変色はありません。 しかし、セラミックインレーをセットする時に当然に接着剤を用いるわけですが、その接着剤が茶色く変色して白いセラミックインレーの周りを縁取るように見えてくることがあります。
当然、こうなっては白い歯と言っていいのやらどうやら・・・・・・
また、よく見たら分かりますが、セラミックで作った白い歯であるといっても、のっぺらで全然歯らしくありません。 残念ですが、こういうことは起き得ることですし、また実際によく見ます。
一方、コンポジットレジンで治療した場合でも、
というように、見た目としてとても自然な感じで、どこを治療したのかよく分からないぐらいであると思います。
費用(金額)的には、相場で考えれば、1/3〜1/5で済んでいます。
お口の中に銀歯やさし歯など金属が一杯見える場合、どこから治そうか・・・、全部治したい・・・、と悩むと思います。
予算は通常限られていますから、やはり優先順位を付けて、今回はココを治す、来年はアッチを治す、と考えるべきでしょう。
人により優先順位は異なると思いますが、審美歯科という治療をしている立場から、一つの考え方を示します。
● ニコッと笑った時に見える上下にかかわらず手前奥歯の銀歯やさし歯などの金属
● お口を開けただけで見える下の奥歯の銀歯やさし歯などの金属 (この場合も手前の奥歯が優先)
上記の二つのパターンに引っかかる金属が、最優先であると考えて、カウンセリングをしています。
治療にかかる費用を考えると、どうしても審美歯科治療の範囲を抑えがちになります。
しかし中途半端に治療範囲を抑えて、後々でその結果に不満が残るよりは、多少費用がかかってでも思い切ったほうが良いこともあります。 最初のカウンセリングで、そして気になったらいつでも何回でも再相談をして、納得できる治療結果を得られるように患者さん自身も努力してください。
治療前の金属が目立つ状態からキレイな白い歯になる為には、一度は削ったりなど嫌な過程を辿らなければいけません。 当たり前ですが、この過程は今回だけで済ませるべきもので、年月を経て何回も繰り返すべきものではありません。 そうです、虫歯にならないように守らなければいけないのですね!
私たち術者サイドから出切ることは、可及的にピッタリと適合するように、確認チェックしながら治療のステップを進めていくことです。 どんなに良い材料や技術を用いても、歯との適合が悪ければどうしようもありません。
一方、患者さんサイドから出切ることは、治療終了時のお口の状態・環境を維持して行くことです。 大体において、治療終了時のお口の中が一番キレイです。 時が過ぎ喉元過ぎると・・・、段々歯磨きも雑になり、歯垢なども溜まってきて、お口の中が少しずつ不潔になってくるものです。 虫歯の原因になる細菌(ストレプトコッカス・ミュータンス)は元々その人のお口の中にいる口腔内常在菌の一種です。 歯磨きや定期健診などのプラークコントロールが悪いと、そういう悪玉細菌が増えて・・・、治療のやり直しという嫌な道へ進んでしまうのです。
二人三脚で守っていくことが大事であろうと思います。
審美歯科治療とは直接関係の無い項目ですが、一度キレイにしたお口の中を大事に守って欲しい!と思うと、避けては通れない項目なので記しています。
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奥歯の審美歯科治療の背景となる基本的な事柄について説明しています。